今回は「観る将」について解説していこうと思います。
記事を書くにあたり語彙力.comさんのサイトを参考にさせていただいております。
言葉自体は2010年ごろからあり、ネットでニコニコ動画で気軽に視聴できるようになったところから将棋のルールがわからなくても、タイトル戦などで食べた物や、外見が好きという理由で棋士を応援する人、解説などを聞いて「観て楽しむ」人が増えていきました。
そして2023年には流行語大賞として「観る将」が選ばれるほどとなりました。
しかしながらその「観る将」を作っていこうという人物がいなければ、なしえなかったお話。将棋PRESSのいしかわごうさんの記事を参考にしながら、観る将の創作過程を調べてみました。
実現させたのは野月浩貴先生と西尾明先生
公式戦対局におけるネット中継の始まりは、2010年のUstreamでのライブストリーミング配信である。第58期王座戦五番勝負の羽生善治王座対藤井猛九段の第2局で行われ、これを実現させたのが野月だった。将棋連盟の米長邦雄会長と新聞社に「実験的にやらせてほしい」と掛け合ったのだという。
Ustreamの配信を行った当時のことを、野月が振り返ってくれた。
「当時は動画配信のコンテンツが少しずつ出始めたころだったので、将棋界でも『何かやってみようよ』という形になったんです」
実験的な企画だったため、周囲からの手厚いサポートがあったわけではない。いわゆる“手弁当”で始めた配信だった。
将棋PRESSより引用
将棋の戦法は相がかり戦法と三間飛車を好まれ、好きな食べ物は焼きナスという野月浩貴先生。
旧知の仲である西尾明先生とともに配信の企画を進められます。
▼野月浩貴先生
▼西尾明先生
残念ながら西尾明先生については好きな食べ物は特定できず。棋風は居飛車を好まれ、角換わり・横歩取り・矢倉を指されますが、時折振り飛車も採用されます。
機械をいじるのが得意だった西尾明先生
中継のセッティングやスイッチングを担当したのは西尾明先生。野月浩貴先生は全体を見るプロデューサーのような役割だったとのこと。
イメージしていたのは、現地の大盤解説会のような雰囲気もありながら、控室で棋士たちが行っている検討に近い様子を見せること。自分たちも出演して他の棋士と掛け合いをしながら、その一手をどう思っているのかを好きに話すことを試されました。
それをやってみたら、視聴者の反応が良く、結果的にネット配信をドワンゴが手掛けていくことになります。
「解説名人」こと木村一基先生とよく語り合った
▼木村一基先生
棋風は居飛車をよく指され、プロ入りされてからは勝率が高い先生として認識されています。対局中は満腹になると集中力低下を意識され、あまり食べられないようです。
野月浩貴先生と同い年であり、先輩棋士たちの解説を見ながら「もっとうまく伝えられないだろうか」と反省会を繰り返されたそうです。
「8五飛車戦法」(参考図)と守りと粘りのあることで広く知られています。
▼参考図は「駒の音」様より引用しております。
そんな木村一基先生の解説は、軽妙なトークとしてファンからは知られています。やはり聞いていてわかりやすい、冗談もときおり発言されるところが人気なようです。
どんな層が観ているのかで解説も変化していく
当たり前に思われるかもしれませんが、ルールをよくわかってない「観る将」が観ていたとしたら、難しい解説をしても伝わりません。また、昭和で大活躍した棋士のお話をされても最近将棋を始められた人からすればピンとこないため、年齢や環境によって実は解説者も変化に対応していることが明かされています。
「よく話しているんですけど、取材に来るメディアや、解説で出るメディアによって解説の仕方を変えなきゃいけないよ、と。例えば囲碁・将棋チャンネルというCSの専門チャンネルは、将棋に詳しい人がメインの視聴者層です。そういう場では一歩踏み込んだマニアックな解説をするべきだし、対してNHK杯将棋トーナメントだとライトな層も見ている。ABEMAやニコ生も、年齢層も含めてそれぞれ見ている層が違うんですね。だから、それぞれにどんな視聴者がいるのかを意識した上で、解説の準備をしてもらう。昔に比べて、そこは徹底されていると思います」
将棋PRESSより引用
イベントや大盤解説会では・・・?
東京の場合は、8割から9割が女性なのだそう。話題性も棋士のプライベート、人に言いたくなるような可愛いエピソードの工夫をされています。
そして勝負である以上、負けてしまう棋士のファンは落ち込んでしまいますが『次はここを改善したらいい勝負になるでしょう』とフォローすることで、「次は勝ってくれるかな」と期待が生まれるわけです。
一方では地方都市の大盤解説になると、高齢者が多いため雰囲気ががらりと変わるため、話題もまったく違うものになります。
「今年、名人戦の解説で金沢に行ったんですが、昔からの将棋好きで、支部に入っていたような方が多いんです。そういった場では、例えば大山康晴十五世名人のエピソードとか、近くの出身棋士だったりとか、地元と絡んだ棋士、年配の棋士の方の話を入れたりすると、やっぱり喜んでいただけるんですね。行く場所やファン層に合わせて、常に何パターンか準備しておくのが理想ですね」
歴史に残る一手も、何が素晴らしいのかを誰かが説明しなければ多くの人には伝わらない。だからこそ、将棋界は伝える側も努力を継続しなければならない。そんな思いが、野月にはある。
「羽生さんが七冠になった時代と比べると、『どう伝えていくか』という部分はものすごく進歩していると思います」
そう言って、胸を張った。
将棋PRESSより引用
まとめ!
現在は当然のようになった「観る将」。2010年代に将棋をより普及させようと試行錯誤された野月浩貴先生と西尾明先生のおかげで、今やネットで当たり前に視聴できる環境になりました。
解説も木村一基先生との反省会がなければユニークな解説も実現されていなかったかもしれません。
将棋のルールがよくわからない人でも楽しめる形となった「観る将」は今後も、広く普及していくに違いないでしょう。